遺留分の時効に関するQ&A
遺留分には時効があると聞いたのですが、どのようなものなのですか?
一部の相続人に認められている遺留分が侵害されている場合、その相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。
この権利を行使するかは遺留分権利者の自由なのですが、この権利を行使する場合にはいくつかの期間制限(時効)がありますので、注意が必要です。
一つ目の期間制限は、自らの遺留分が侵害されていることを知ったときから1年以内に請求をすることです。
そのため、遺留分権利者が、被相続人が亡くなったことを認識していなければこの期間の制限が進行することはありませんし、たとえ亡くなったことを認識していたとしても、自らの遺留分を侵害する内容となっている遺言書の存在を知らなかったというような場合には、この期間制限は問題になりません。
二つ目の期間制限は、相続が開始してから10年以内に請求をすることです。
相続の開始とは、基本的に、被相続人が死亡したとされる時のことを指します。
さらに、しばしば忘れられてしまう時効があります。
いったん遺留分の請求をした場合には、遺留分特有の時効(期間制限)の問題はなくなるのですが、代わりに、一般の債権としての消滅時効が進行します。
そのため、民法債権法の改正前の請求であれば10年、債権法の改正後の請求であれば5年の消滅時効の対象となります。
これに関しては様々な議論がありますが、相続の開始ではなく、遺留分の請求をしたのが改正前後のいずれであるかによって、消滅時効の期間が異なるという考え方が有力です。
遺言書の内容から自分の遺留分を侵害されているか分からない場合でも、「自らの遺留分が侵害されていることを知ったとき」にあたるのでしょうか?
遺言書では自らが相続する財産があるという内容になっている場合などには、他の相続人が相続する財産の内容やその評価額を把握しなければ、自分の遺留分を侵害しているかどうかが明らかになりません。
このように、遺留分が侵害されているのかはっきりしない状態の場合、少なくとも、自らの侵害されている遺留分の具体的な数額までを認識している必要まではないとされています。
そのため、遺産のすべて、あるいはその大部分を他の者が相続するというようなことになっている遺言書の内容であれば、遺留分の侵害についての認識はあったとして時効は進行するといえそうです。
しかし、「自分の取り分がある程度あるものの、他の相続人と比べて少なく、自分の遺留分が侵害されているかもしれない」という程度であった場合には、容易に判断することはできません。
加えて、どの程度の認識があれば認識があったとされるのかについては、まだはっきりとした判断が示されているわけではありませんし、事案によって異なるといえるでしょう。
そのため、遺留分を侵害されている可能性があるという状況のもとで、遺留分の権利を主張するのであれば、念のため、遺言書の内容などを知ったときから1年以内に請求だけはしておいた方がよいと思われます。
遺言の効力を争いたいのですが、この場合にも遺留分の請求をしなければいけませんか?
遺言の内容が遺留分を侵害している内容だった場合に、遺言の効力を争うのであれば、遺言が有効であることを前提とした遺留分の請求を行うということは、矛盾した行動だといえます。
ですが、遺言の内容を知ったときから1年以内に遺留分の請求をしないままだった場合、遺言が有効であるとの判断がされてしまえば、遺留分の請求ができなくなってしまうとも考えられます。
しかし、この点については、最高裁判所が、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があり、遺留分権利者が、無効を信じているため遺留分の請求権を行使しなかったことがもっともであると納得できるような特段の事情が認められる場合には、時効が成立しないとしています。
そのため、このような事情が認められれば特に問題はないのですが、やはり、遺言が有効と判断される場合に備えて、念のため、遺言書の内容などを知ったときから1年以内に遺留分の請求だけはしておいた方がよいと思われます。
時効に備えて遺留分を請求するには、どのような方法で行えばよいですか?
法律上は、遺留分の請求の方法が定められているわけではありません。
ただし、後日、裁判となったときに備えて、期限内に請求をしたという証拠をしっかりと残しておかなければなりません。
どういうことかというと、裁判となった際は、遺留分を請求する側は、時効の期間満了前に請求をしたという証拠を提出しなければならないということがあり得るからです。
そのため、実務では一般的に、配達証明を付けた内容証明郵便で、遺留分を請求する旨の通知書が送るようにしています。
この通知書に記載する内容としては、必ずしも、遺留分として請求する具体的な額の記載までは必要ありませんが、少なくとも、どの件についての遺留分の請求で、誰から誰に対して行ったものであるのかが特定できような記載をするとよいかと思います。
内容証明郵便の作成方法にはルールがありますので、ご自身で作成される場合には、そのルールに従って作成してください。
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