遺産分割の後に新たな財産が見つかった場合の対応
1 協議書に記載されていない遺産の相続手続き
遺産分割協議においては、遺産分割の内容が決まった後、遺産分割協議書が作成されます。
遺産分割協議書では、どの財産を、どの相続人が、どのように取得することになったのかを記載します。
このように記載された遺産分割協議書を使って、不動産の名義変更であったり、預貯金の解約手続きであったり、相続手続きを進めることができます。
しかし、遺産分割協議書を作成した後、遺産分割協議書に記載されていない新たな財産が見つかった場合には、その財産についての手続きができません。
その場合には、記載されていない財産についての遺産分割協議書を新たに作成する必要があります。
遺産分割が、遺産分割調停においてなされたときも、同様に、遺産分割協議書を作成するか、別途、遺産分割調停を申し立てる必要があります。
2 未発見の財産が見つかる可能性への予防策
このように、遺産分割協議書に記載されていない財産が見つかった場合には、新たに対応をする必要が生じてしまいます。
相続人間で争いがなく、協力が容易な場合であればよいですが、相続人の間に争いがあったり、相続人の数が多かったりする場合には、新たに遺産分割協議書を作成することはとても困難です。
そのような場合に備えて、未発見の財産が見つかったときには、そのような財産をどのように取得するのかを遺産分割協議書に記載しておくという方法があります。
たとえば、「本協議書に記載されていない財産が発見された場合には、その財産は、相続人●●が取得する。」といったような内容の条項を設けておくという方法です。
しかし、未発見の財産がどのようなものであるかは分かりませんし、特定の相続人が取得するという内容に対して、他の相続人が応じてくれるかどうかは分からないという面があります。
そのため、このような予防策を採ることができれば、後日のトラブルを防ぐことができるものの、この方法による対応には限界があるともいえます。
3 新たな財産が見つかった場合の相続税の手続き
相続税の申告をした後、新たに財産が見つかった場合、相続税の対応をする必要があります。
具体的には、新たに見つかった財産を相続財産に加えたうえで、修正申告をする必要があります。
この修正申告は、なるべく早くすべきであるといえます。
というのも、税務署からこれらの財産の申告漏れを指摘された場合には、無申告加算税のペナルティが大きくなるというデメリットがあります。
それだけでなく、修正申告と追加分の相続税の納付が遅れると、その分の延滞税を負担しなければなりません。
そのような負担を避けるため、新たな財産が見つかった場合には、なるべく速やかに対応をする必要があります。
4 相続財産調査の重要性
このように、新たに相続財産が見つかった場合には、負担と費用がかかってしまいますし、そのことで新たなトラブルを招いたり、相続税の負担が大きくなったりしてしまいます。
そのような事態を避けるためには、相続財産の調査をしっかりとしておくことが重要です。
なるべく漏れがないように相続財産の調査をするためには、専門的な知識と経験が必要です。
通帳などで預貯金の履歴を確認したり、財産の種類に応じた調査をしたりして、しっかりと相続財産の調査をする必要があります。
たとえば、不動産がある可能性の市町村に問い合わせて、名寄帳や固定資産税の評価証明書の取得をすれば、不動産の存在や内容を調査することができます。
ほかにも、株式などの金融資産がある可能性があれば、証券保管振替機構に証券口口座がある金融機関を照会するという方法をとることができます。
そうすれば、さらにその金融機関に照会することで、そこで管理されている金融資産の内容を確認することができます。
このように、なるべく相続財産の調査をしっかりとしたうえで、未発見の財産がないようにしておくことが重要です。
相続財産の調査をしっかりとするためには、専門家に相談や依頼するなどしておくのがよいでしょう。
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